HOME CRAFT COLUMN 7縫目 「北欧の夏の訪れとともに・・・」

スカルス手工芸学校に通っていた半年間は、本当にあっという間でした。

来た時は雪景色だったのに
気づけば初夏の清々しい季節になっていました。
夏が近づいているということは、卒業も間近ということです。

帰りたくないよーーーーー!!!!

こんなにゆったりな生活に慣れちゃったら、日本で生活できなくなるかも・・・そんなことを考えながら、毎日の些細なことも、卒業の日が近づくにつれ名残惜しくなっていきました。

毎朝交わす 「God morgen!(おはよう)」 のあいさつや、キッチンスタッフのBenteが作ってくれたキャロットケーキ、
クラスメイトの家に遊びに行ったり、
毎日の朝礼でさえも名残惜しい時間でした。

朝礼も日本とは少し違いました。

日本の朝礼といえば、「前ならえ」をして整列し、終わるまで立ち続ける。

話すと先生に怒られる。

というイメージではないですか?

私が通っていた学校では、リンリーンと鐘が鳴ると、みんな講堂に集まり各々が好きな場所に腰掛けていきます。
そして校長先生のあいさつで始まります。

「God morgen!」

校長先生が話し始めると、みんな何かを取り出し、作業を始めます。
刺しかけの刺しゅうだったり、編みかけのセーターだったり、スケッチブックだったり。

「何作ってるの?」

「友達の子供にプレゼントする帽子。すてきでしょ?」

などと、お話しをする生徒もいます。

みんなあまりにも堂々とやるから、逆にこっちがドキドキしてしまって・・・

怒られないかな?大丈夫なのかな?と。

“日本の朝礼”が当たり前だった私にとっては、見慣れない光景!

校長先生に失礼にあたらないのか気にしてしまったのだけど、みんな所々で先生の方を見ていたり、

「Yes!」と声に出してリアクションをしていたり

「それは○○ですか?」

と手を挙げて質問したりすることもありました。

みんなちゃんと聞いてるんだ!すごーい!!と、感動。

校長先生の代わりに、生徒がワークショップをやることもあり、終始なごやかな雰囲気の朝礼でした。

今までこの学校でのいろんな体験を紹介してきましたが、実は私が「ヒュッゲ」という言葉を知ったのは、帰国したあとです。

ちょうど日本で流行始めたくらい。

以前、クラスメイトのマチルダが日本へ遊びに来たときのこと、
本屋に並んだ北欧特集の中にあった「ヒュッゲ」に関する多数の書籍を見て

「え、何でこんなに特集されてるの?!」

と、とても驚いていました。

デンマークでは、当たり前のように日常生活の中にヒュッゲが溶けこんでいて、あえて意識することではないんだなきっと。

さて!卒業まであとわずか!

卒業制作に追われる中、夏至のお祝いをしたり、

みんなで卒業旅行に行ったり、夏を存分に味わい

最後のデンマーク生活を満喫します。

卒業展示を控えているからか、この時期は先生達もさすがに慌ただしくなります。

夜中まで作業することもしばしば。

次回はいよいよ卒業制作展示です。デンマーク全土からクラフト作家さんたちも集まり、盛大に行われます。

お楽しみにー!

【今月の手芸くらし】

穴の開いた靴下などを繕う刺繍「ダーニングステッチ」をやるときに使うものです。

右は、「ダーニングマッシュルーム」という道具で、これに生地をあてて刺繍しやすくします。北欧の蚤の市で購入したものです。

左は、「アップルトン」という糸で、細いのにしっかりして、おススメです。
少し毛羽立っているので、繊維が結束して繕った部分がさらに丈夫になります。

唐戸友里
服飾系の高校・専門学校で学び、その後、デンマークの手工芸学校へ留学。
帰国後、すこしずつ活動をスタート。
作品展示・販売の他、刺繍の講師も務める。
2018年に横浜から下諏訪へ移住
現在、地域おこし協力隊として活動しつつ、教室OPENに向け準備中。
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