HOME CULTURE & LIFE COLUMN 8時間目「ガリレオの望遠鏡的『日本人の英語』論」(後編)

Hello, everyone!

さて、前回は英語や他言語を学ぶ上で不可欠なモノは、
「間違ってもいいんだと心から安心できる場」であるとお話しました。

私たち、日本人は「恥の文化」とも言われるように、
失敗や間違いを「恥」として、極端に避ける傾向があります。

もちろん「モノづくり」の精度の高さを支えてきたように、
それ自体は日本人の強みでもあります。

しかし、これが「他言語の習得」という場面においては、
どうしてもネガティブに働いてしまうのです。

では、どうすれば「細かな間違いを気にせず」、
そして、必要以上に「恥ずかしがらずに」、
積極的に「英語を使っていく」ことができるのでしょうか?

それには、「英語を学ばないようにすればいいのです!」(キッパリ!)

「えっ???」という反応が多いかもしれません。

そうですよね。
ちょっと、わかりにくいかもしれませんので、
もう一度、ハチモットの唐戸友里さんのコラム(5縫目「言葉の壁?!」)を思い出してみましょう。

おそらく、唐戸さんの一番の『目的』は、憧れのデンマークで「手芸を学び」、
「ステキな作品を作りたい」ということだったはずです。
つまり、英語は目的ではなくて『手段』の一つに過ぎなかったのではないでしょうか。
別の言い方をすれば「英語『を』学ぶ」ではなく「英語『で』学ぶ」環境に飛びこんだとも言えます。

「英語『を』学ぼう」とすれば、英語の間違いばかりに気持ちが向いてしまいますが、
学びたいのは「手芸」ですから、発音のキレイさや正確な文法に気を取られている暇はありません。
「伝えたいこと、聞きたいこと」を、知っている単語や文法とジェスチャーで懸命に伝え、
「相手の言いたいこと」を、言葉や表情や状況、そして作業の様子や道具を使う手元から懸命に読み取るしかありません。

もちろん、それは容易なことではなかったと思います。
しかし、目の前で実物を制作し、指導を受ける過程の中で、
具体的な「道具の名前」や「作業の内容」を伝える英語が飛び交うのです。
これこそ、文字通りの「実践的な英語」、「生きた英語」のレッスンなのではないでしょうか。

ところで、みなさんは「イッテQ」(日本テレビ)の人気コーナー「出川イングリッシュ」を
見たことがありますか。

彼は毎回、外国の街(英語圏)に一人残されて「ミッション」を与えられます。
私の見たところ、英語力はうちの塾の小学生以下だと思います(出川さん勝手にごめんなさい)。
それなのに、彼は全く臆することなく町中の人にどんどん話しかけていきます。
わからないことがあっても「ソーリー、ワンモア」と何度でもお願いをし、
アクセントや発音を、ただただ懸命に真似していきます。

不思議なもので、一生懸命な人を助けようとしてくれる人は、
どこの国の、どこの街にもいるものだなと気づかされます。

彼はいつの間にか、「キーワード」探り当て、一人で乗り物を乗り継ぎ、
目的地にたどり着き、「ミッション」をクリアしていきます。

個人的には出川さんが少しまじめに英語自体の学習にも取り組めば、
相乗効果で、あっという間にレベルアップするのではと思っています。
(ただし、残念ながら「出川イングリッシュ」のおもしろさは無くなりますが。)

さて、どちらの例にも共通している点は「英語『を』」学んでいるのではなく、
「英語『で』」学んだり、「英語『で』」別の目的を達成しようとしたりしている点です。
意識が英語以外の目的に強く向かえば向かうほど、英語そのものの細かいミスから解放され、
英語を使うことへの抵抗が少なくなります。

もちろんやりたいことを見つけて、海外に飛び出せれば理想的なのですが、
時間やお金など様々な制約もあり、誰もが簡単にできるわけではありません。
ただ、この「発想」自体は日本国内であっても充分、再現することが可能です。

最近、都市部を中心に「英語と料理」を組み合わせた教室が人気を博しています。
Hobby(趣味)とEnglish(英語)を同時に学ぶ「Hobinglish」という新語まで生まれていて、
多くの教室で高いリピート率を上げているそうです。
これなども、意識的かどうかは別として、先の例と同じ効果を利用していると考えられます。
少なくとも「おいしい料理」は、その教室に通い続けるモチベーションになっているでしょう。

もしかすると、これからの英語教室は、英語教師が教える時代ではなくなるかもしれません。
例えば「元メジャーリーガーが英語『で』教える野球教室」とか、
「イギリス人バンドマンが英語『で』教えるギター教室」とか…
これらは少し極端かもしれませんが、こんなコンセプトの教室が増えてきたら楽しいと思いませんか?

「英語『を』学ぶ」という意識から少し解放されて、
好きなことや興味のあることを「英語『で』学べる」、そんな環境が整っていけば、
日本人の「英語」に対する劣等感や消極性もかなり改善されるのではないでしょうか。

ところで、みなさんには、「英語『で』学んでみたいモノ」がありますか?
それを見つけることこそが「英語上達への第一歩」かもしれませんね。

ということで、今回の授業はこれで終わりです。

村上 陽一(むらかみよういち)
・小学校時代は、野球、サッカー、陸上と、いわゆる「暗くなるまで外にいる」タイプ。
・中3時に新設された茅野市立東部中学校に移り、初代生徒会長及び文化祭実行委員長を兼任。
・清陵高校に進み、サッカーにバンド活動、清陵祭実行委員長と高校生活をエンジョイ(笑)。
・国立東京学芸大へ進学。この頃の優先順位は「バンド→塾でバイト→勉強」と、さらにエンジョイ(苦笑)。
・1999年、東京都東大和市で独立起業し学習塾を経営。後に母の看病のために塾を譲渡し帰郷。
・2005年、都市部とは異なる地域のニーズに応えるべく茅野市に学習塾『学び舎Planus(プラナス)』を設立。
・2015年、母校東部中学校の初代同窓会会長、学校評議員、コミュニティスクール運営委員を務める。

~最近では~
・子どもが算数大好きになるには、まずママからと「ママが楽しむ算数講座」を開講。
・東部中学校内で「放課後自習教室」をサポートするボランティア活動をスタート。
・不登校のお子さんのための居場所、学習支援を行う『Glück(グリュック)』を始動!!
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