HOME CULTURE & LIFE PERSON No.5 お菓子職人×ゲストハウス女将 細野千恵(原村)

原村にある小さな製菓工房「Oven Works」。ここからほっこりするような可愛く、美しい焼き菓子が日々生まれている。その隣には「Yatsugatake Small House」と呼ばれるセルフビルドのゲストハウスがあり、訪れる客人は木の香り溢れる室内に、丁寧で静かな時間を過ごすことができる。

今回のインタビューでは、原村に来て12年目の「Oven Works」店主、そして「Yatsugatake Small House」の女将として切り盛りしている細野千恵さんにお話しを伺った。(以下、敬称略)

ずっと好きだった「作ること」

細野さんは、いつから料理の道に入ったのですか?

細野:小さなころから自分で「作ること」が大好きでした。料理に関しては、高校時代、進路を決めるときに“手に職をつけたい”と思ったんです。それと、遊びに来た友人たちによくご飯を作っていて。それが「美味しい」と言ってもらったことが嬉しかったのがきっかけで、卒業後は地元の仙台から大阪に行き、料理の専門学校へ入りました。

専門学校を卒業して、そのまま料理人になったということですね?

細野:学校では料理全般を学ぶコースを選択しました。卒業後19歳で上京して渋谷のレストランに就職した後、また大阪に戻って料理人※1をしていたところで、身体を壊しました…。始発に出て、終電で帰る、その繰り返しの生活を続けてボロボロになって…。地上から30階のレストランで、お客さんからの眺望は最高、でも厨房からは外は見えず、“今日の天気は???”それがわからないくらいに働き詰めて、腎臓と肝臓を壊しました。

それで仕事を辞め、入院生活をしていたタイミングで、兄の結婚式が地元仙台で行われることになり、ついでに転院をして地元に戻ることにしたんですね。専門学校時代の友人が、新潟でバイトをしているから遊びにおいでよと言ってくれて、大阪から仙台に帰る途中に、新潟に寄り、、、そこで、友人と一緒に働いていた今の旦那さん・ほっさん※2と出会いました。

ひゃーーそんな出会いだったですねーー!

※1 大阪時代はデザート専門
※2 ほっさん…暮らしの工房「ワークスヤツガタケ」木工工房を営みながらゲストハウスYatsugatake Small Houseの運営をしている。書家。

Yatsugatake Small House

Oven Works

いざカナディアンファームへ!

絶妙なタイミングでの旦那さんとの出会い。病気がある意味、人生の転機になったわけですね。

細野:そうなんです、あの専門学校に行って良かった~(笑)
しばらくして、ほっさんは1年半カナダに行きました。その遠距離の間に、私は仙台に戻って、朝はパン屋で製造をして、夜はカフェバー調理。結局ここでも朝から晩まで働くことになったけど(笑)、今度は楽しかったです。

カナダからほっさんが帰国して、知り合いから“ほっさんにぴったりの所があるよ※3”とカナディアンファーム※4を紹介されました。いきなり一緒に行くんじゃなく、私もどんな所なのか、一人で行ってみることに。。。セルフビルドの素晴らしい建物、なんでも自らの手で生み出していく姿…“そうそうこれ!こんな暮らしを体験したかった!”お客さんで行ってみたのに、そのまま10日間ファームにお世話になってました(笑)

※3 旦那さんのほっさんは、カナダで「暮らしを自らの手で作っていく」ことを経験していました。
※4 カナディアンファーム…原村にある廃材王・ハセヤンが運営するあらゆるものが手作りのレストラン。

24歳で八ヶ岳に来たということですね。八ケ岳生活はどんな印象でしたか?

細野:ファームでは畑をやらせてもらったり、レストランで料理したり、ツリーハウスの建築も体験させてもらったり、何でもやらせてもらってました!自分たちの暮らしの基本は、間違いなくカナディアンファームにあります。八ヶ岳に来ることが目的なわけじゃなかったので、このエリアのことも最初はよく分からずに暮らしていたから、定住するとは思ってもみなかったんです。でも、だんだん“こんないい場所なんだ八ヶ岳はー!”と実感していって、大好きになりました。

自分たちの手が生み出すこと

その後に今のようなゲストハウスと、焼き菓子工房の運営に繋がるんですね。

細野:ゲストハウスであるYatsugatake small houseには8年間、自分たちが住んでいました。ちょうど家探しをしていたときにこの家を見つけて、誰も住んでいない様子だったので近所の方に持ち主を聞いてもらったんですよ。そしたらすぐに連絡が取れて…翌日に借りることが決まりました(笑)引っ越し、結婚、ファーム卒業、妊娠、出産、育児…その間に、この家をセルフリフォームして、五右衛門風呂を作ったり、シャワー室を作ったり、菓子工房を作ったり…たくさん思い出が詰まってます。

後にこのお家は持ち家になるんですが、ここ自体がセルフビルドで建てられたお家でした。100年前の材を牛車で運んだりしたそうです!
私たちが暮らしてきた当時は、不便なことが沢山ありましたが、ひとつひとつのことが愛おしくって。自分たちが大切に過ごした場所でお客さんに喜んでもらえることがとても嬉しいんです。

お菓子作りにもその感じが伝わってきますね。

細野:もともと小さいころからお菓子を作ることが大好きでした。小学生のときには、どうやってホットケーキは膨らむんだろう?という疑問から毎日焼いたり(笑)料理も好きですが、やっぱりお菓子を作ることが好きですね。

今思えば、「つくること」自体がなんでも好きなんですよね。ゲストハウスでも焼き菓子でも来てもらった皆さんに、自分たちが幸せでやっていることを楽しんでもらうことが、また幸せです。

細野さんが生み出すマフィン

毎日を丁寧に生活していることが伝わってくる細野千恵さん。愛情を持ってひとつひとつの過程を大切にしているからこそ、みんなから愛される・美味しく可愛いお菓子が生まれているのだと感じました。インタビューをありがとうございました!

Oven Worksの焼き菓子はデリ&カフェ「K」で購入することができます!

取材:8mot編集長みっちゃん

Profile

細野千恵(ほそのちえ)

3児の母。焼き菓子職人。
仙台市に生まれ、大阪の料理専門学校を卒業後、東京・大阪・仙台のレストラン・カフェ勤務を経て2006年に原村へ移住。カナディアンファームで暮らしの修行を積み、現在は夫とともにゲストハウス・Yatsugatake Small houseを運営しながら、焼き菓子工房Oven Worksにて日々お菓子を作り提供している。

案内人
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