HOME CULTURE & LIFE PERSON No.3 陶芸家×ギャラリーオーナー 「高橋由美子(茅野市)」

茅野市湖東にあるgallery yt(ギャラリーワイティ)を運営するのは、陶芸家の高橋由美子さん。約20年前に東京から八ヶ岳に移住し、陶芸の道へ。いまでは料理教室の器や、八ヶ岳のセンスのよいお店で高橋さんの白い粉引で作られた器を見ることができる。また、ギャラリーでは個展だけでなく、金継ぎ教室、料理教室、朗読会など集いの場所としてたくさんの人々が集まっている。

今回のインタビューでは、八ヶ岳で陶芸の道を志したこと、ギャラリーを開放する意義など、お話しを伺った。(以下、敬称略)

八ヶ岳で出会ってしまった陶の道

寒さが厳しい八ヶ岳で、どのような経緯で陶芸家になろうと思ったのでしょうか?

高橋:実は、陶芸するために八ヶ岳に来たわけじゃないんだよね。たまたまそういうことになっていったの。本当はインテリアコーディネーターを目指してた。東京の大学で居住学を学んで、インテリアの仕事をして、コーディネーターの試験を受けたのに2度落ちてしまった…。そのとき26歳、なんか嫌になっちゃってね。とにかく環境変えたくて「そうだ、ペンションで働こう」って思っちゃったんだよね。

そのとき見つけたのが、車山高原のペンションだった。そこで1年半務めて、今度はペンション経営したくなって(笑)、「ペンションやるなら料理だ」と東京戻って、イタリアンとフレンチのレストランに務めたの。それで3年後、同じペンションに戻ったら、そのときペンションが下火になってた。別の道を探さなきゃなぁと思ってた頃に、陶芸教室に通い始めたんだよね。

ようやく、ここで陶芸が登場しましたね?

高橋:そう。3年陶芸教室に通ってみると、自分が陶芸をやっている時に“無”になっていることがわかってね、「これ、やりたい」って思ったわけ。自分がそれで生活できるとか、そんなこと何も考えずに。

そうしてペンションを辞めて、アルバイトしながら陶芸の先生の元で修行がはじまったの。その5年後に独立した。陶芸家になったのは八ヶ岳に来て8年後のこと。陶芸したくて八ヶ岳じゃなくて、八ヶ岳で陶芸、“無”になれるものと“出会って”しまったの。

陶芸家として独立

陶芸家となってみてどうですか?

高橋:今年で独立して10年。私は陶芸の道に入るのが遅かった。20歳くらいではじめる人とは10年の差があるの。だから私の30代(修行時代)はがむしゃらに陶芸しかやらなかった。何もほしいものもなかったし、ただひたすら陶芸に向き合った。そして40歳で独立してから、バーバルノートやカンビオにようやく作品を置かせてもらえるようになったの。

なんで、こんなに陶芸やってるんだろう?って自分に問いてみると・・・実は今でもはっきりした理由はわからない。だた、“無”になり、あの場にあると安心するから。自分のなかが平安になるから。自分がブレたときでも、工房に行けばバランスが取れる。立ち位置がはっきりするからかもしれない。

ハーバルノート…ハーブとアロマの専門店・茅野市
カンビオ…オーガニックマーケット・岡谷市

ただ陶芸もインテリアの分野に入りますよね?

高橋:そうそう、空間的なもの大好きなの。建物、そしてその中の空間、だから陶芸もインテリア、ではあるよね。家具だったり、照明だったり、器だったり…。結局、「美しい」のが好き。だから花が好き。華道やったり、お茶も習っているけれど、それは「美しい」から。

好きなことが「空間美」を感じさせるもの、無になることが「陶芸」という感じ。

日本の美に惹かれて~粉引~

好きな「美しさ」と陶芸が組み合わされて、高橋さんのスタイル「粉引」が生まれるんですね。

高橋:美しいものって世の中いっぱいあるけれど、私は研ぎ澄まされた無駄のない日本の美にとても惹かれる。

その美しいものを主張しすぎず、それでいて存在感もある粉引でいくことを決めたの。粉引は独立する前に、自分で何度も釉薬を作って「よし、これで行こう」と決めたスタイル。私の陶器はすべて同じ釉薬をかけているの。でも窯の炊き方で出る色は毎回違う。そのときでしか、出せない色になる。

でも好きな色は、緑なんだけどね(笑)

※簡素で無駄がなく、ひたむきに一つのことに向かう高橋さんと話していると、だんだんひと昔前の武士と話しているような錯覚がありました。

陶器を作る責任者として

作品を作るにあたって気を付けていることやこだわりは何かありますか?

高橋:作品自体にこだわりはそんなにないけど、いまは花器を中心に作ってる。注文で器も受けてるけどね、私は花を生かすものを作っていきたい。モノってさ、本来なくてもいいものだよね。だから「あってもいいもの」を作りたい。そうならば「美しいもの」を。

縄文土器が何千年も前のものなのに残っているように、陶器は火が入ることでただの土じゃなくなってしまう。ずーっと残るもの、つまり土に還らないものになる。分解されないものになる。…ゴミになるようなものを作りたくないな、と思って、失敗するかなと判断したら焼く前に土に戻すよ。もし陶器が土に還るならば無駄に作っていたかもね。

だから丁寧に、手に取った人が代々使ってもらえるものを作っていきたい。

八ヶ岳で陶芸をやっていくこと

八ヶ岳は陶芸をする上でどんな環境ですか?

高橋:八ヶ岳って陶芸としてはとても環境が悪い。0度以下になれば土が凍るからね、1.2.月は完全に仕事ができない。本来は陶芸に向いてないの。だから通年陶芸できる場所を探したこともあったんだけど、なぜか結局ここになる。

でもなぜここにいるのか。単純に気持ちいい。自然も美しい、水はおいしい、そして人がいい!人との繋がりの面白さに気付いたのは独立してからだけどね。それまで籠って陶芸してたから…。バッとみんな集まってイベントして、またバッとそれぞれの場所に戻るっていうのがとても好き。

gallery ytを運営する

自宅をギャラリーにして、数々のイベントが行われていますね!

高橋:この一年は、金継ぎ教室、料理教室、詩の朗読会を定期開催してる。どれも器を使ってのイベントで、私にとっては陶芸と離れてないの。この家をどう生かせるかなと思ったときに、自分だけの気持ちいい空間にせずに人に開放しようと思った。いろんな人に作品を見てもらいつつ、社交的な公共の場を作りたかったね。

今度の展覧会は、実家秋田の幼馴染、書家・春光とのコラボレーション。インテリアとして見に来てほしいし、非日常を感じてもらえるようにディスプレイしたいな。

結局、インテリアに戻ってますね

高橋:そうだね、言われてみれば(笑)
結局、インテリアコーディネーターやってるね。

インタビュー中、すっとした姿勢と一本線を貫いた生き方に、何度も高橋さんが武士に見えました(笑)これからも作品および活動を楽しみにしています!ありがとうございました!

取材:8mot編集長みっちゃん

Profile

高橋由美子(たかはし ゆみこ)

陶芸家。
1967年秋田県横手市生まれ。2007年に八ヶ岳・原村で陶芸家として独立。
2008-2013年 旧料亭「信濃」で毎年個展
2015年 「クリスマスのしつらい展」gallery yt
2016年 「花の器展」gallery yt
2017年 「縄文のうつわ展」入選

高橋由美子 伊藤春光
『炭と墨の景色』陶芸と書

期間 2017.11.22(水)~11.28(火)
時間 10:00~17:00
場所 gallery yt(茅野市湖東6336)
お問い合わせ 0266-77-3033/obotaka@gmail.com
Facebook https://www.facebook.com/events/255855708276170/

※書のワークショップもあり。お問い合わせください。

幼馴染の春光(右)と高橋さん(左)

案内人
8mot編集部
八ヶ岳をもっと楽しく。8motの編集部
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