美味しいコーヒーの淹れ方を紹介しましょう。
でもその前に!!!
『美味しいコーヒー』って『どんなコーヒー』でしょう?
ある人は、「芳ばしくって苦味の効いた深いコーヒーが美味しい」と言う。
ある人は、「爽やかな酸味でフルーティーなコーヒーが好き」と言う。
又ある人は、「苦味も酸味も少なくて飲みやすいコーヒーがイイ」と言う。
人それぞれ『美味しいコーヒー』は、全く違うのです。それなのに、一律に「こうしてこうしてこうやれば美味しいコーヒーが淹れられますよ~」なんて手軽で簡単な方法は、実は、これ程いい加減で不親切な話はないのです。
コーヒーを淹れるのは、料理と一緒。本気で取り組むなら簡単ではありません。そのやり方、淹れ方ですぐに味が変わります。言い方を変えれば、淹れ方によって、自分の意思で味をコントロールすることが出来るのです。
では、どんな淹れ方でどんな味のコーヒーになるのか?
何をどうすれば自分好みの味のコーヒーを淹れられるのか?
今回は、その答えとなる基本的な3つのポイントを紹介します。
これは、どんな器具を使って淹れる時でも共通している普遍的な原則です。少々面倒でも、この3つのポイントを組み合わせることで、あなたの味覚に合う、あなた好みの、あなただけの美味しいコーヒーが淹れられるようになります。
ポイント① 湯の温度で味が変わる
高温の湯(約90~100℃)で淹れると、苦味の強いキリッと刺激的なコーヒーになる。
低めの温度の湯(約80~85℃)で淹れると、苦味の少ないやさしいコーヒーになる。
ポイント② 抽出時間で味が変わる
ゆっくり時間をかけてじっくり淹れると、苦味の強い濃厚なコーヒーになる。
短い時間でササッと淹れると、苦味の少ないさっぱりとしたコーヒーになる。
ポイント③ 豆の挽き具合で味が変わる
細挽き(細かい粉粒)にして淹れると、苦味の強い重たいコーヒーになる。
粗挽き(大きな粉粒)にして淹れると、苦味の少ないさらりとしたコーヒーになる。
この3つは、柴田書店発行「コーヒー『こつ』の科学」(著者 石脇智広)を参考に、私がいろいろ試した結果導き出されたポイントです。
この3つのポイントを組み合わせれば(使うコーヒー豆のポテンシャルを越えることは、絶対に出来ませんが、その範囲内で)あなた好みの美味しいコーヒーが、必ずや淹れられるはずです。
分かりやすいように、具体的な例を挙げましょう。
例1)買って来たコーヒー豆を淹れて飲んだら、私には苦すぎた。
<対処方法>
①淹れる際の湯の温度を下げてみる。
→まだ苦い場合→②ササッと淹れて抽出時間を短くしてみる。
→まだ苦い場合→③コーヒー豆の挽きかたを粗くして大きな粉粒にしてみる。
→苦味は減ったが全体に薄くなった場合→コーヒー豆の量を増やす。
例2)もらったコーヒー豆を淹れて飲んだら、酸味が強くて口に合わなかった。
<対処方法>
①沸かしたての熱い湯で淹れてみる。
→まだ酸っぱい場合→②じっくり淹れて抽出時間を長くしてみる。
→まだ酸っぱい場合→③コーヒー豆の挽きかたを細かくして小さな粉粒にしてみる。
→酸味は気にならなくなったが、全体に濃過ぎる印象になった場合→コーヒー豆の量を減らす。
例3)苦味の効いたズシッと濃厚なコーヒーを淹れたい時。
<対処方法>
③コーヒー豆の挽きかたを細かくして
①沸かしたての熱い湯を用意し
②ゆっくりじっくり時間をかけて抽出する。
例4)爽やかな酸味の軽やかなコーヒーを淹れたい時。
<対処方法>
③コーヒー豆の挽きかたを粗くして
①ぬるめの湯を用意し
②ササッと短時間で抽出する。
以上、3つのポイントを組み合わせて是非お試しください。
さて、ではなぜこの3つのポイントでコーヒーの味が変わるのでしょうか?
「なぜ?」を知ることで、理解度が増し応用も利くようになります。専門的で少し分かり難い話ですが、説明しましょう。
コーヒーを淹れるということは、コーヒー豆の成分を湯に溶け出させるということです。さまざまあるコーヒー豆の成分のうち、実は『苦味の成分』は、湯に溶け出し難く、『酸味の成分』は、湯に溶け出し易いのだそうです。
この特性を使って味をコントロールします。
- 湯の温度…溶け出し難い『苦味成分』を高温の湯を使うことで十分に溶け出させると苦いコーヒーになる。逆に、低温の湯を使うと『苦味成分』は、溶け出し難いまま十分に溶け出すことが出来ないので苦味の少ないコーヒーになる。
- 抽出時間…ゆっくり時間をかけることで、溶け出し難い『苦味成分』が、溶け出てくるのを待つことになるので、苦味の多いコーヒーになる。逆に、短時間で淹れると溶け出し難い『苦味成分』が溶け出す前に抽出を終えるので苦味の少ないコーヒーになる。
- 豆の挽き具合…細かく挽くと粉粒が小さくなり湯と接する表面積が増えるので、溶け出し難い『苦味成分』が出やすくなり苦味の強いコーヒーになる。逆に、粗く挽くと粉粒が大きくなり湯と接する表面積が少ないので、溶け出し難い『苦味成分』は十分に溶け出すことが出来ず、苦味の少ないコーヒーになる。
『苦味成分』と違い、溶け出し易い『酸味成分』は、何をどうしてもすぐに溶け出します。それでも酸味を抑えたい場合は、『苦味成分』を十分に出して苦味を多く感じることで、酸味を感じにくくします。
いかがでしょう?
ややこしくて面倒かも知れません。
たかだかコーヒーを淹れるというだけのことですが、基本的な3つのポイントだけでもこれほどの情報とそれを裏付ける理屈があります。
これを「奥が深くて面白い」と思うのか?
それとも「面倒臭い」と言って切り捨てるのか?
この違いは、大げさに言えば、豊かな人生を送るか?それとも味気ない人生で終わらせるか?と言い換えることも出来るでしょう。
唐突な感じですが、今回、私が一番お伝えしたいことは、
「便利で簡単で手軽なモノは、実は、薄っぺらでツマラナイ」
「不便で面倒臭くて手間のかかることこそ、本当は、豊かで面白い」
ということなのです。
八ヶ岳の麓の小さな田舎町での暮らしは、不便で面倒臭くて手間のかかることの多い生活ですが、実は、豊かで本当に面白い毎日なのです。 毎朝、面倒でも手間をかけて美味しいコーヒーを淹れ、豊かで楽しい生活を送っています。