HOME FOODS COLUMN その3『それでも強いて、美味しいコーヒーってどんなコーヒーか?』

前回、「人それぞれ『美味しいコーヒー』は、全く違うのです。」と書いたばかりです。

人それぞれに“好み”があるので、一律に「こうしてこうしてこうやれば美味しいコーヒーが淹れられますよ~」なんて簡単にはいかない。という話から、どう淹れるとどんな味のコーヒーになるかという複雑で面倒な“自分好み”の『美味しいコーヒーの淹れ方』を紹介しました。

それでも、強いて、強いて、強いて、普遍的な『美味しいコーヒー』ってどんなコーヒーか?考えてみました。
私の考える“美味しいコーヒー”は、2つあります。

その①『湯を注いだ時に、モコモコと膨らむコーヒー』

私が、ハンドドリップでコーヒーを淹れていると、湯を含んだそのコーヒー粉がモコモコと膨らむ様を見たお客様が、良くこうおっしゃいます。

「さすが!上手ですねー。私がやっても全然膨らまないよ。」
で、私は、すかさず言います。
「上手下手じゃないんです。新鮮なコーヒー豆を“挽きたて”で淹れれば、誰がやってもこんな風に膨らみますよー。」

ではまず、コーヒー粉に湯を注いだ時にモコモコ膨らむのはなぜか?

実は、コーヒー豆の中に溜まっている炭酸ガスの仕業なのです。
焙煎する前のコーヒーの生豆は、ごく薄い緑色の堅い粒で、香りも何もしません。これに熱を加えると化学反応を起こし、色が茶褐色に変化して、粒は膨らみ、芳ばしい香りがして来ます。この工程が、『焙煎』です。実はこの時、コーヒー豆の中に炭酸ガスが溜まるのです。

溜まった炭酸ガスは、焙煎後、豆の中から少しずつ外に出て来ます。豆の状態でも炭酸ガスは、少しずつ出て来るのですが、豆を挽いた時に、一気に、たくさんの炭酸ガスが出て来ます。ですが、挽きたてであれば、まだ炭酸ガスが残っています。

そのまだ残っている炭酸ガスが、モコモコとコーヒー粉を膨らませてくれるのです。しかし、挽いてから時間をおいてしまうと残っていた炭酸ガスも抜け切ってしまうので、コーヒー粉が膨らむことはありません。

では、何故炭酸ガスの残っている“モコモコ膨らむコーヒー”が、美味しいのか?

逆に言えば、なぜ炭酸ガスの残っていない“膨らまないコーヒー”は、美味しくないのか?

答えは、〈コーヒー豆の中の炭酸ガスの役割〉を知ることで自ずと見えて来ます。
炭酸ガスの役割は、大きく2つあります。

1つは、炭酸ガスは『香りの成分』の“運び屋”
炭酸ガスが、コーヒー豆の中から出て来る時、一緒にコーヒーの『香りの成分』を連れて出て来ます。

コーヒー豆があると辺りに良い香りがするのは、このためなのです。そして豆を挽いて粉にする時、たくさんの炭酸ガスとともにたくさんの『香りの成分』が一気に出て来るので、香りをとても強く感じます。全体の香りの70%以上が、この時に出て来ると言われています。

前述の通り、湯を注いだ時にモコモコ膨らむコーヒーには、まだ炭酸ガスが残っているということです。つまり『香りの成分』も残っているということです。一方、膨らまないコーヒーには、炭酸ガスがほとんど残っていません。つまり『香りの成分』もほとんど残っていないということなのです。

膨らまないコーヒーは、香り高いコーヒーとは言い難いのです。

2つめは、炭酸ガスは、コーヒー豆の劣化を防ぐ“ガードマン”。
実は、炭酸ガスが、コーヒー豆の中にあることで、コーヒー豆の劣化の大きな原因となる『酸素』『湿気・水分』が、コーヒー豆の中に入り込むのを防いでいます。これにより、コーヒー豆を[豆の状態=炭酸ガスが残っている状態]で保存した場合と[粉に挽いた状態=炭酸ガスが抜けてしまった状態]で保存した場合とで、『酸化』など、味を大きく損なう劣化の進行速度に驚くほどの大きな差があるのです。

またしてもややこしくて難しい話になってしまいました。
整理します。

人それぞれ好みがあるにしても、、、 淹れる時にモコモコ膨らむコーヒーは、香りが豊かで、酸化などの劣化も少なく『美味しいコーヒー』と言える可能性が高い。

逆に、膨らまないコーヒーは、香りが少なく、酸化などの劣化も進んでいて『美味しいコーヒー』と言える可能性が低い。

注)挽きたてでも“極端”に細かく粉に挽いた場合、膨らまないことがあります。これで淹れたコーヒーは、“極端”に苦味や渋味・雑味の多いコーヒーになります。
また、挽きたてでも焙煎の“極端”に浅い、つまり色の薄いコーヒー豆は、膨らまないことがあります。これで淹れたコーヒーは、“極端”に酸味が強くかなり酸っぱいコーヒーになります。
この2つは、挽きたてでも膨らまないコーヒーです。これを『美味しいコーヒー』とする人がいるとすれば、好みも“極端”な人と言わざるを得ないでしょう。

結論

モコモコ膨らむ美味しいコーヒーを飲みたい方は、まずコーヒー豆を粉に挽くコーヒーミルやコーヒーグラインダーを手に入れる必要があります。

そして、挽きたての“炭酸ガスが残っている”コーヒー粉で淹れましょう。挽きたてであれば、よほど変な淹れ方をしない限り、電気式コーヒーメーカーでもかなり美味しいコーヒーが淹れられます。

次回は、私の考える“美味しいコーヒー”その②。
テーマは、『愛と勇気』です。
どうぞお楽しみに!

コーヒー豆焙煎師 八ヶ岳珈琲工房 テーブルランド
中原英貴
富士見町在住。東京・中野区出身。 テレビディレクター時代の番組ロケがきっかけで縁が繋がり 2001年富士見町に移住、二拠点生活をスタートさせる。 妻が始めたパン教室で新たな縁が繋がり、2005年にコーヒー豆の焙煎を始める。 仕事で東京へ通わなくて済むようになりたいという理由で テレビディレクターから自家焙煎コーヒー豆製造販売に転業。 番組作りと同じように、可能な限り妥協の無いとことんこだわった仕事を心がけ、 人に感動してもらえるような美味しいコーヒー作りを目指しています。
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