私は八ヶ岳に棲みついた天涯孤独の一匹オオカミ、逢徒狼。
この度、訳あってハチモットで連載をすることになった。
『八ヶ岳バイプレイヤーズ』 そう、脇役だ。
この界隈にひっそりと、しかししぶとく美しくあり続ける地を紹介していきたい。
まずは「八ヶ岳のダークサイド」だ。
八ヶ岳といえば主峰赤岳、玄人好みの阿弥陀岳、爆裂火口を従える硫黄岳、山ガール大好き天狗岳、誰もが一度は登りたい主役級の山々はいくつもある。だがそれらに勝るとも劣らない色香を放つ場所があるのを貴方はご存知だろうか?
さあ、出発だ。
桜平
梅雨時だというのに嘘のように青い空だ、、、裏街道ばかり歩いてきた私にはちょっと眩しいくらいだ。歩くこと約1時間強、すると紫煙の立ち上る向こう側に怪しげな建物が現れた、秘密基地か?!
いや、「オーレン小屋」 山小屋だ。
ボルシチが一番人気らしい。
次は必ず食ってやる。
一服しつつ八ヶ岳の伝説を学んだら出発だ。
樹林帯をひたすら歩く、小鳥のさえずりが荒んだ私の心を癒してくれる。嗚呼、日常では決して味わうことができない贅沢な時間。
しばらく歩き続けていると少し景色が変わってきた、いよいよ森林限界が近いのか?
箕冠山山頂を越え、シャクナゲが混生するハイマツ帯を抜ければ本日の目的地はもうすぐそこだ。
到着。
南八ツと北八ツの境目辺り、箕冠山と根石岳の鞍部だ。
ピークでさえない、誰も目指すことのないだろう通過点、言うなればただの鞍部、暗部、そう、ダークサイド。
こちらだ。
美しい、ただただ美しい。
根石岳側から。
硫黄岳直下の爆裂火口が荒々しい。
ここはただの荒涼とした砂礫地ではない、ケシ科、高山植物の女王様、駒草の群生地だ。ダークサイドを埋め尽くすコマクサが拝めるのは7月中旬から8月上旬にかけて、、、一度は観てみたい。
本日のコーヒー
エチオピア イルガチャフィー ベレカG1、いわゆる上白石、、、いや、モカ。
シダモ地方イルガチャフィー地区で栽培された豆、ハンドピックとカッピングを何度も繰り返した極上物。紅茶を思わせるようなフレーバーと甘みが特徴的だ。今日は、こいつを根石岳山頂でいただくとしよう。
朝から約3時間ほど歩き、標高も700mほど上げて疲労の蓄積したこの体、ちょっとキツめの一杯をお見舞いしてやろうじゃないか。グラインダーを中粗挽きにセット、一気呵成に挽き倒す、24g。こいつを180ccのお湯で落とし淹れてやる。
完成。
冷めないうちに喉に流し込む。
ガツンとくる苦味、その後押し寄せてくる甘みと爽やかな香りで一気に昇天、疲労感を吹き飛ばしてくれた。
いつもなら狂ったように吹き荒れるこの辺りの悪名高い強風も嘘のように穏やか、西天狗を眺めながらの珈琲時間は最高だ。これだから山と珈琲はやめられない、ああ、ジャンキーと呼んでくれて構わない。
強風の証し
本日の昼飯
鞍部に来たら必ず顔を出してもらいたい場所、根石岳山荘。
ぜひ一晩過ごすことをお勧めする。
満天の星、ぶっ飛ぶ。
ご来光と雲海、気絶するほど悩ましい。
命あるうちに一度は味わってもらいたい禁断の果実。
さて、今日はここで昼飯をいただくとしよう。
カレーライス、牛丼、ラーメンの三者択一。
カレーライスにした。
鞍部でいただくカレーは格別だ。ルーがレトルトか自家製か、そんなことはこの際どうでもいい。
カレーなのに水じゃない、アルマイトの小さなやかんで供される番茶がアツい。
ご馳走様でした。
本日のルート
桜平 — オーレン小屋 — 箕冠山 — 根石岳 — 根石岳山荘 — 箕冠山 — 夏沢峠 — オーレン小屋 — 桜平