HOME CULTURE & LIFE COLUMN 第11歩「ピンチ!土地探し難航」の巻
建築家、藤森照信さんの“追っかけ、入りまち”藤森建築をたてるべく、土地探しの真っ只中!ここに至るまでの、いろいろなお話を綴っています。

こんにちは“くらしまわり”山越典子です。
あなたの設計で宿がしたい、と藤森照信先生にラブコールを送り続けて3年がたったのち、ついについに(2013年)
土地が決まれば設計しましょう」との有難いお返事をいただきました!
オーストリアにある藤森建築ゲストハウス“鸛庵”にも泊まりに行き、絶好調。
さーここから土地探しへとぐいぐい進んでいく・・・
そんな予定。

詳しくは
藤森旅館へつづく道 第1歩「雷に打たれた日」
藤森旅館へつづく道 第2歩「いざ!!長野へ」
藤森旅館へつづく道 第3歩「藤森さんとご対面」
藤森旅館へつづく道 第4歩「棺桶にはいるとき、私は」
藤森旅館へつづく道 第5歩「嘘も方便、お茶会にいく」
藤森旅館へつづく道 第6歩「告白のとき」
藤森旅館へつづく道 第7歩「何度も何度も」
藤森旅館へつづく道 第8歩「追っかけ入り待ち」
藤森旅館へつづく道 第9歩「おいしい家へようこそ」
藤森旅館へつづく道 第10歩「ジェラシーの行き先、オーストリアへ」

さて、楽しかったオーストリア、そして三菱治所アルティアムでの“藤森建築と「鸛庵」”展。
旅行から帰ってきて、なんだか満タンにやる気が充電された感じ。
心はじーんと暖かいまま。

鸛庵を目に焼き付けている

よぉ~~し、と気合いも十分なのだけど、
土地探しといっても・・・どうしようかな?

ひとまず、本腰いれて土地探しを始めたい!

一人で切り盛りしていた“おいしい家”
移住者の私がたくさんの人と繋がりをつくる、という目標も
藤森さんにご飯を食べてもらう!という目的も(笑)果たしたお店・・・
思い切って閉める事を決意します。

閉店を惜しんでくれる常連さんには
「いずれ違う形で帰ってくるから!待ってて!」
と告げて自分に追い込みをかけておきます。

お店もひと段落させ、土地探しへとぐいっぐいっ。

私の土地の条件はこれ!

  • 広く、人工物が目にはいらないない
  • 周りの環境に人工的な変化が起こりにくい
  • 土地の持つ心地よさがある

この3点

“自然との調和”をテーマにしている藤森建築、
奇跡みたいな最高に気持ちいい場所を見つけたい!!

数年後には周りの景観がすっかり変わってしまった・・・なんて事も避けたいな~なんて考えると、なかなかいいところってないもんです。
お金がいくらもある訳ではなく、広い広い土地を買うなんて事も叶わない。

どうすればいいんだろ?

あちこちの心当たりを周り、方々の知人に調査を繰り返す中で、
自分で自分に課している条件の難しさが身にしみて泣けてくる日々。

「無理なのかも?」
とくじけそうになった時には、高過庵を訪れたり、
「土地が決まれば設計しましょう」と言ってくれた藤森さんの事を思い出しては自分を奮い立たせます。

「最高の場所を見つける!」

そう、だってこれは幸せな土地探しなんだもん。

虹がかかる高過庵、夢のような景色

一夜漬けのお茶会をずっと、心残りにしていた私は
ここでようやく茶道も習い始める事に。
花嫁修行ならぬ、女将修行も同時進行です(笑)

そして、子供を持つなら今がチャンスかな?という気持ちもありました。
幸運にもタイミングよく妊娠。
妊娠子育て期間に土地も探せるし~、ラッキ~一石二鳥と軽~く思っていた私。

いやいや、考えが甘かった、甘甘甘かった・・・
妊娠、出産、子育てと言うものを全くわかっていなかったのです。

まず妊娠、なんとも珍しいタイプで産むまでつわり。
ずっとえずいている(笑)
後半はずっと横になっている(笑)

そして、低置胎盤による帝王切開での出産。

術後の経過が良いなんて言われても、嘘やろ?全然動けん。
そんな状況で初の子育てに突入~
そして、息子の寝ないこと寝ないこと・・・
やっと寝かしつけたと思って、一息つこうとしゃがんだ時
「ポキッ」と膝がなる音で起きる、泣く・・・この小さな生き物のなんと繊細な事よ。
母はしゃがむ事も許されない(涙)
なんて絶望感を感じる事もしばしば(笑)

この寝顔があるから、子育ては頑張れる

と、こんな日々に突入、土地探しが完全にストップしてしまうという
空白の二年間を過ごします。

息子も1歳になる頃、母業も一年。
体も元に戻ってきて、そろそろ土地探し再開したい!という気持ちが爆発してきます。

さて、どこかあるかな?

「あ!あの土地!」

と言う事で、息子の寝かしつけに車で走って見ていた土地。
(子供が寝なかったのにも意味があったってことか・・・)

「こんなところで出来たらいいのにな~」

とぼんやり思っていた土地に思い切ってアタックしてみる事にしました。

売地ではない!
八ヶ岳農業実践大学校の土地!!
そうだ、間借りしよう!

八ヶ岳がバーン、この抜け感はそうそうない

こんな事したいという企画書を作成する事にします。
そして、企画書を書くにあたり、空白の2年の間にオープンしていた藤森建築ツアーも決行!

まずは、多治見モザイクタイルミュージアムへ

圧巻の姿

ワクワクがいろんなところに散りばめられている

もう一つは、滋賀県近江八幡でショップ・カフェ・本社を建てている
たねやグループのラコリーナさん。

大胆な草屋根が美しい

オブジェもいいな

自然との調和をまさに体現している、藤森ワールド

ラコリーナさんでは、企画書に盛り込む為のアンケートにもお答えいただきました、素敵なスタッフの方達に感謝。

こうして、新しくできた藤森建築を巡り、とてつもない幸福を感じ、
自分もこんなに人をワクワクさせる場所を作りたいな~と一段と熱が入るのです。

パソコンが得意でない私の企画書は、まさかの手書き。
子供が寝ている合間を見つけては少しずつ進めていきます・・・
しかし子供はなかなか寝ない(笑)
亀の歩みとはこのことか!と思いつつ、1日1日少しずつ進めていきます。

じゃじゃ、じゃーん

ようやく完成!全15ページ、なんと半年程かかっている(笑)

そして、この企画書の最後にはこんなサプライズが。

なんと、心強いことでしょう

藤森さんにこんな素敵なお言葉をいただきました~。
家宝です。

そうして出来た企画書ですが、結果は・・・
実践大学は公益財団法人の為、残念ながらこの企画はとおらない。
とのお返事をいただきました。

とっても残念だけど、なんだか清々しい。
この企画書を書き上げる為に、
改めて自分の思いやこんな事がしたい!という気持ちが明確になったのです。

振り出しに戻った土地探し、落ち込んでいる暇はない!
藤森さんのサインをみては「にやり」また頑張れる私なのでした。

よぉ~~~し、見つけるぞ!

次回、最終回「奇跡の土地」3月13日お楽しみにしていてください。

手にはいつも土産を持って

お菓子の差し入れに、手紙を添えて。

何通出したか?ラブレター。

暮らし探究家
くらしまわり 山越典子
安曇野にあるホリスティックリトリートセンター穂高養生園にて調理を担当。2012年茅野市に移住。玄米菜食のお店「おいしい家」を一人で切り盛りする。出産のため一時休業。
2017年春より、大工の夫と共に「くらしまわり」をスタートさせる。おいしく食べること、丁寧に暮らすことの面白さを提案している。不定期でお料理教室を開催予定。
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