HOME CULTURE & LIFE COLUMN 5時間目「AIは『できない』をほめることが『できない』」(後編)

みなさん、こんにちは。
お子さんの夏休みの宿題、無事に終わりましたか?

お子さんが勉強しているときに
「遊びたいんだったら『さっさと』終わらせなさい。」
「学校で習ったんじゃないの?『習った通りに』やればいいじゃん。」
…なんて、声掛けをしていませんか?

そんな、みなさんも、前回や今回の授業を読んでもらえたら、声を掛けるタイミングや内容が少し変わってくるかもしれません。

さて、早速ですが、前回の最後に触れた「解答C」の紹介から始めたいと思います。

問題は、こんな内容でした。

問題
「今、5人の子どもがいます。一人に3個ずつアメをあげるには、全部で何個のアメが必要でしょうか。」

それに対する小学校2年生の出した「解答C」がこちらです。

解答C
3個+3個+3個+3個+3個=15個   答え15個

重要なのは「なぜ、彼がこの解答にたどり着くことができたのか。」です。

その大きな要因は、彼がまだ掛け算を「習ってなかった」ということです。だからこそ、彼は足し算を駆使し、試行錯誤するしかなかったのです。

教育熱心なご両親や、成果を焦る指導者は、つい「先取り学習」をさせたくなる性質があります。それは、往々にして後から習う解法(この場合は「掛け算」)の方が、「最短距離」で解答にたどり着けるからです。

しかし、「最短距離」の解法が、逆に「試行錯誤」の機会を奪うこともあります。私たちは「試行錯誤」の過程でこそ、それまでに習った知識を駆使するという貴重な経験を積むことができます。そして、単なる知識を「応用の利く知恵」に昇華させることができるのです。

もう一点、この事例から、子どもの持つ大きな可能性を感じることができます。この小2生は、「『5人分』→『5回足す』」という意味上の変換に気づきました。実は「5回足す」という概念は「5倍する」という掛け算の基本的な概念の一つです。

既に習っている「足し算」と、まだ習っていない「掛け算」の概念を結びつける手掛りを自らつかんだとも言えるのです。おそらく彼は掛け算の導入の際にも、その概念をしっかり理解しながら授業を受けられることでしょう。

つまり、むやみに大人が「教え過ぎない」ことで、子どもの「考える力」が高まり、「既習事項の理解」が深まっただけでなく、まだ「教わっていない概念を自分で発見」するという、将来、自主的に学習をしていく上で、とても重要になってくる「感動」を経験することができたのです

もちろん個人差はありますが、本来は多くの子どもたちが、このような性質や能力を多分に持ってるはずです。

では、なぜ、このような性質や能力を発揮できない子がいるのでしょうか。

それは、周囲の大人が「速く・正確に答えを出せ」と子どもたちを焦らせるからです

「先取り」という概念や、「速く・正確に」という声掛けは、他人との比較から生まれる発想であり、「100点を目標」として、1点でも多く取らせるための発想です。
例えば、お友達より「早く『九九』や『公式』を暗記して」「スムーズに正解を出せた」として、その部分だけを過剰にほめることで高まった「自己肯定感」は長続きするのでしょうか。

もし、別の場面で「誰かより多少遅く」なったとしたら、急に「自分は落ちこぼれなのかも」という不安に襲われたり、「もういいや」となげやりになったりはしませんか。どこかの段階で「先取り」学習が難しくなり、周囲に追いつかれたり、追い越されたりした時点で、「自己肯定感」が脆くも「劣等感」に化けてしまうのではありませんか。

一昔前より「『ほめられて』育った子ども」が増えているにもかかわらず、全体として日本の若者の「自己肯定感」が全く高まっていない理由の一つは、ここにあると考えています。

ただし、「教えない方がいい」というのは、「放っておく」こととは全く異なります。じっくり考えていて、答えがなかなか出てこない様子を「見守る」という行為は、意外と忍耐が必要とされるものです。いっそのこと、解法を教えてしまった方が楽かもしれません。

しかし、身近な大人こそが、「AIが見逃しがち」な子どもたちの思考過程をしっかりと見つめて、その「過程と努力をほめて」あげる必要があるではないでしょうか。

さらに、自戒の念を込めて言えば、教育者が子どもたちの「試行錯誤や熟考の機会を奪う」ような指導をしてはいけないのだと思っています。

~私の学習を妨げた唯一のものは、私が受けた教育である。~

もしかしたら、そんなことに気づいていたアインシュタインは、警鐘の意味でこんな言葉を残したのかもしれませんね。

では、これで5時間目の授業を終わります。

村上せんせーの活動

諏訪圏域子ども応援!8月31日(土)
「学習支援の持つ可能性」~こども・学校・そして地域を育てる~
詳細はこちら!
http://8mot.com/culture/15528/

村上 陽一(むらかみよういち)
・小学校時代は、野球、サッカー、陸上と、いわゆる「暗くなるまで外にいる」タイプ。
・中3時に新設された茅野市立東部中学校に移り、初代生徒会長及び文化祭実行委員長を兼任。
・清陵高校に進み、サッカーにバンド活動、清陵祭実行委員長と高校生活をエンジョイ(笑)。
・国立東京学芸大へ進学。この頃の優先順位は「バンド→塾でバイト→勉強」と、さらにエンジョイ(苦笑)。
・1999年、東京都東大和市で独立起業し学習塾を経営。後に母の看病のために塾を譲渡し帰郷。
・2005年、都市部とは異なる地域のニーズに応えるべく茅野市に学習塾『学び舎Planus(プラナス)』を設立。
・2015年、母校東部中学校の初代同窓会会長、学校評議員、コミュニティスクール運営委員を務める。

~最近では~
・子どもが算数大好きになるには、まずママからと「ママが楽しむ算数講座」を開講。
・東部中学校内で「放課後自習教室」をサポートするボランティア活動をスタート。
・不登校のお子さんのための居場所、学習支援を行う『Glück(グリュック)』を始動!!
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