最近、八ヶ岳の若者たちが繋がりはじめた。それまで個々の地域で活動を行ってきたグループ同士が、ゆるやかな繋がりの中でともにイベントを行っている。
昨年、UAライブが八ヶ岳自然文化園で開催されたが、実行委員は富士見・原・茅野・諏訪・岡谷からのメンバーで構成されていた。そのイベンターとして中心を担っていた内の一人が、今回のinterviewee(インタビュイー)である高橋淳さんである。(以下、敬称略)
三足のわらじでやっていくということ
― 昨年、木こり×イベンターとして独立されたようですが、イベンターはいつからやっているんですか?
高橋:イベント主催は昔からやっていたけれど、とにかく独立したかった。毎月固定のサラリーをもらって生活していく道を安心と思えず、むしろ怖さを感じた。不定期でも、自力とみんなで支え合いながらやっていくのがいいと思ったんだよね。
20代のときに一度イベント会社を立ち上げようと思ったけど、その時は早すぎた。そこから木こりとしてのサラリーマン時代に、乙事キャンプとスークスークを続けたことで少しずつ認知されるようになって、小さなイベントを頼まれるようになった。いまはそのおかげで、沢山声がかかるようになったけど、自分としては、三足のわらじで木こり、イベンター、ギターリストでやってる。
世の中をよくするために、心から楽しむこと
― 自主企画でも依頼だとしても、どうしてイベントをやりたいと思いましたか?
高橋:とにかく子どものときから、より良い社会になるにはどうしたらいいか、そればかり考えてた。中学のときは登校拒否になるほど繊細で、学校や人間社会の在り方に疑問をもっていたんだよね。でも登校拒否になったからって、引きこもりだったわけじゃない。
毎週末、友達が家にくるし、学校に戻れば文化祭実行委員長になってみんなで楽しんだりね。高校のときは富士見のコミプラ(コミニュニケーションプラザ)を夜借りて、DJイベントもした。当時から「ここでイベントできたら面白いな」という目線はいつもあったよね。
いろんなことがある中で、“世の中良くなるには、まず人が心から楽しむことが大事だ”と、学生のときからずっと思ってたことに行きついた。気づけば、これは職業になるとわかった。
みんな、それぞれに役割がある
― その過程のなかで、職業・高橋 淳で行くことになったんですね。
高橋:すごく好きな話があって、荻窪のラーメン屋で、若いころ通ってた人が何年か振りにその店を尋ねて言うんだって。「この店、味変わらないなぁ」って。でも実は、その店は時代に合わせて味を少しずつ変えていたと。この話し聞いて、これだと思ったよ。高橋淳もずっと変わらない。だけど、余計なプライドと自我は外していくことが大事だって。だからその為にも人の話は絶対に聞くことにしてる。
もともと自己主張も強いから、必然的にリーダーにはなってしまうけど、それは単にリーダーという役割にすぎない。みんなそれぞれに宴会部長、事務長、縁の下の力持ちだったり、みんな均等に役割がある。みんな同じだよね。
ひと昔前は、三足のわらじを履くなんて「なに?」って目で見られるけど、今はもう違う。でもそれも、いきなりは始められなかった。木こり10年やって、つまり石の上に3年を3回繰り返したことで自信がついたよね。
「世界平和は家庭から」
― 名刺には「世界平和は家庭から」と書いてありますが、なぜそう書こうと思ったんですか?
高橋:隣にいる人が自分といることで楽しいと思ってくれるなんて、最高じゃない?ただそれだけなんだけど、手前からやっていこうと思って。自分と自分のまわりにいる人を幸せにしたい、これが原点で、名刺にも「世界平和は家庭から」と書いている。
その想いから、イベントでも境界線をなくしたい。富士見、茅野・原とか、線を引く必要ないよ。それ実現が出来るのが、イベントなのかな。
『どの八ヶ岳が本当か?!サミット』
― これからやってみたいイベントはありますか?
高橋:いっぱいあるけど、イベントとしては、『どの八ヶ岳が本当か?!サミット』やってみたいな~。みんな自分たちが見てる(角度の)八ヶ岳があるでしょ?茅野・原から見た八ヶ岳、北杜から見た八ヶ岳、川上村見た八ヶ岳…。これってゴールがないサミットで、ゴールがないのがいいんだけど、みんなでぶつけ合って、真剣に話せたらいいよね。
なにもない八ヶ岳の魅力
― 八ヶ岳に今感じている魅力は?
高橋:・・・八ヶ岳って、なにもないよね。それかな。「何もないこと」、あとセンスもないこと(笑)18歳から26歳まではギターリストとして東京にいて、それから八ヶ岳に戻ってきて、気づいたんだよ。なにもないから、圧倒的に楽しい!ってことだったよ。東京はすでに全部あるから。
楽しいところ、それがまさか地元だったとは。
高橋:今の社会って、一歩踏み間違えば奈落の底にすぐいってしまうでしょ。八ヶ岳なら仲間で助け合っていける。イベントをやっていくもう一つの理由もそこで、イベントはセーフティーネットだとも思ってる。人が繋がることっていろんな問題を解決しやすいんだよね。そのためのセーフティーネット。繋がりのためにイベントを仕掛けているっていうのもあるよ。都市だと色んなサポート機関もあるけど、繋がりの中でできるのがいいと思ってる。
新しい文化を作るためのマーケット
― 最後に、今年から始まった八ヶ岳ヴィレッジマーケットについて聞かせてください
高橋:常々、文化を作れたらいいなと思ってきた。ヴィレッジマーケットはその可能性を持っていると思う。時間をかけて、毎週、当たり前のように店があって、当たり前のように人が来てくれるように気合は入っている。八ヶ岳には潜在出店者がたくさんいるはずだから、その人たちがちょっと出店してみようと気軽に思えるマーケットになれるんじゃないかな。
※八ヶ岳ヴィレッジマーケット 八ヶ岳自然文化園にて4月から10月まで毎週末に開催されるマーケットhttp://yvm.jp/
― ありがとうございました!ますますのご活躍を楽しみにしています!
取材:8mot編集長 みっちゃん
Profile
高橋 淳(たかはし じゅん)
幼い頃、東京から母親の故郷富士見町に移住。「母親は地元」「父親はIターン」という家庭環境もあり、成人する頃には地元民とIターンを繋ぐ意識を持ち始める。18歳から26歳はプロのギタリストを目指し上京。23歳の時、同級生達と地元で「乙事キャンプ」を始める。20代後半林業に出会い約10年の木こり修行を続けるなかで、八ヶ岳地域をより良くしたいという想いが強まる。30代後半の今、イベントプロデューサー、木こり、ミュージシャンの三足のわらじをはきながら理想の実現に向け超戦中。