季節ごとの八ヶ岳の日々、音、響きを感覚全開で綴ります。
カラスのヒシャクという、童話に出てきそうな名前を持つ植物を知っていますか?
この季節、草むらや道端などで、スマートな首をすっと伸ばしてその存在を控えめに主張します。
葉っぱは三枚。その脇からしゅっと茎が伸びて、不思議なカーブを描くものを頭につけています。
この不思議なカーブを描くもの、仏炎苞(ぶつえんほう)と言います。
苞(つと)とは、つつみ、おみやげもののこと。
仏炎とは、仏像の後ろにある光背(こうはい)のことです。(写真はWikipediaより)
この、神様が計算して作ったとしか思えない美しいカーブの苞の中に、カラスビシャクの花はひっそりと包まれているのです。
カラスビシャクを掘ってみると丸い形の球茎(きゅうけい 地下茎の一種)が出てきます。
この球茎は半夏(はんげ)という美しい名前の生薬で、去痰、鎮吐、鎮静効果があります。
昔の農家さんたちは、農作業の合間にこの半夏を採って薬屋さんに売っていたそうです。なので、カラスビシャクには、「へそくり」という別名があります。
半夏は、節分、彼岸、土用などと並ぶ暦の中の言葉にもなっていて、カラスビシャクが生える頃、夏至から数えて11日目にあたる、7月2日ごろを半夏生(はんげしょう)と言います。
昔の農家さんにとってこの半夏生は大切な日だったようで、この日までに畑仕事を終えたり、田植えを終える目安になっていたそうです。
また、長野県の佐久のあたりでは、「はんげにんじん、なわしろごぼう」と言って、ニンジンやゴボウの種を蒔く目安としていたそうです。
こんな風にかつては私たちの暮らしの中にあり、とても大切にされていたカラスビシャクは今が盛りの時期です。
カラスビシャクを見ると、人々の暮らしと暦、農、薬、全てが繋がっていた頃のことが胸に浮かぶのです。
おまけの話
カラスビシャクはサトイモ科の植物なのですが、先述の仏炎苞を持つ花はサトイモ科の花の特徴で、他にもミズバショウ、マムシグサなどがあります。
それからサトイモ科の植物には毒があるものが多く、カラスビシャクの球茎もそのままの状態では毒があります。
ミズバショウ、マムシグサも同様に毒があります。コンニャクもサトイモ科の植物ですが、そのままでは毒があります。
そう考えると、サトイモ科の植物の中でそのまま食べられるサトイモやタロイモは、存在自体が素晴らしい奇跡の植物だと私は思っていて、食卓にサトイモのお料理を出すとき、「サトイモはね、奇跡の植物なんだよ」と毎回言ってしまい、子供たちに鬱陶しがられています(笑)
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