季節ごとの八ヶ岳の日々、音、響きを感覚全開で綴ります。
【赤ちゃんと動物と植物の性格の話】前編はこちら
植物の中には、愛すべきしたたかさを持っている子がいます。
例えばヒメオドリコソウ。
植物の中には、寒い冬の間は地面にへばりつくように葉を広げ、春になると地面から垂直に茎を伸ばしてくる子たちがいるのですが、この、地面にへばりつくように広がった葉の形態をロゼットと言います。
植物の中には、温かくなってから伸ばす葉と、ロゼットの時の葉の形状が全く違う子もいて中々面白いのですが、ヒメオドリコソウのロゼットはこんな感じ。
暖かくなって茎が地面から伸びてくると葉の形態が変わり、葉先が少し尖ってきますが、ロゼットの状態の時は葉先が丸みを帯びています。
この丸みを帯びたロゼット状の時の葉の形が、カキドオシの葉によく似ているのです。そして、ヒメオドリコソウはしばしばカキドオシと混生しています。しれっと、「私、カキドオシです。」って顔をしてカキドオシの中に紛れていたりします。(写真はカキドオシの群生地にしれっと紛れるヒメオドリコソウ)
同じようにしれっと紛れている子たちは多くて、例えば稲の中に紛れて、「私、これからお米になります」って顔をしているヒエ。
私も、慣れるまでは全然違いが判りませんでした。
なんだかこういう子たちは、人の存在を分かってそこにいるような気がするのです。
こういう子たちとは反対に、人がいてもいなくても、当たり前だけど自分のペースで気儘に生きているんだなあと感じる子たちもいます。
山の中で流れのままに自由に生きている樹木と、庭や公園の中の、人に管理されている樹木は、たとえ樹種は同じでも持っている雰囲気が全然違うんですね。
花びらが落ちても土に帰るだけ。人の営みとは無関係にその時が来たら花をつけ、その時が来たら花を散らす。そんな、誰にも管理されることなく、ひたすらに自分自身である植物の時間を感じると、安心感とも憧れとも何とも言えないような気持ちになるのです。
そんな憧れにも似た気持ちで、コブシの甘い香りを今年も嗅いできました。
それではまた次回。